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アレックス・ナンズ、藤澤みどり[訳] (2019)『候補者ジェレミー・コービン「反貧困」から首相への道』読了

イギリスの最大野党/労働党党首コービンについて書かれた本です。イギリスでは、2016年に実施された国民投票でEU離脱が選択されました。先週(12月12日)実施された下院総選挙もEU離脱が争点でした。事前予想では、2016年の国民投票の結果を受けて、2020年1月末までにEU離脱を実現するという与党/保守党が優勢(とのこと)でした。ただ近時、事前予想とは異なる選挙結果(例えば、2016年:アメリカ/トランプ大統領当選・イギリス/EU離脱選択、2017年:イギリス/与党保守党過半数割れ)もみられることから、この本を手に取りました。

(下院総選挙の)結果は、(今回は)事前予想通り、与党の勝利(または事前予想を上回る与党圧勝・野党大敗)でした。その理由として、コービン党首の存在があげられています(例えば、コービン自身はEU懐疑派といわれているものの、離脱支持と残留支持が同居する労働党内の状況を考慮して、どちらの支持も打ち出さずあいまいな戦略に終始した)。コービンは、大方の予想を裏切って2015年の党首選で選ばれたそうです。その要因として、「ジェレミーは政界で一番いい人間だ。だから敵がいない(16頁)」「コービンのことが好きだったのだ。同僚の誰にとっても親しみやすいコービンは、個人的な敵意を持たれていなかった(77頁)」「コービンは実際、聴衆にわかる言葉を使ってコミュニケーションをとっている(89頁)」といった点があげられています。今回は、こういった点に加えて、(強い)指導力が求められたということでしょうか。コービンは来年早期に辞任する考えを示しています。少し時間をおいて、一連の出来事を客観的に振り返るものがあれば読んでみようと思います。