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橋本尚 (2015)『利用者指向の国際財務報告』読了

IFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)の目的は、財務諸表利用者の適切な経済的意思決定に役立つこととされています。(今更ではありますが)この点を(自分なりに)腹落ちしたく精読しました。そして、(原則主義である)IFRSが有効に機能するためには、「先ず、会計基準に対して適切な判断を下すのに必要な専門的知識を保持していること。次に、会計基準の具体的適用に際して倫理観および誠実性を発揮できていること。最後に、原則を貫いたり、または原則から逸脱した場合に適切な説明責任を履行できること。つまり、この専門性、倫理性および説明責任を備えた者が会計に関与すること」(79)が不可欠であることを(再)確認しました。(言わずもがなではありますが)「こうした前提を度外視して、IFRSの単なる技術的な適用ないし導入のみを推進する場合には、却って、自由裁量の世界で企業は会計基準を恣意的に駆使するおそれもあり、本来の真実な会計情報の開示が担保されないおそれもある」(同頁)からです。またIFRSの特徴として、単一の高品質でグローバルに認められた会計基準があります。確かに「複数の会計基準が併存するのは困るというのが、アナリストやファンドマネージャーの実感」(23)だそうです。しかし「どの会計基準を使っているのかではなく、むしろ、その企業、産業が中長期的に成長するかどうかという点に関心があるのではないか」(26)という指摘は、(わが意を得たりは言い過ぎですが)興味深く感じました。なおIFRSの原文は英語です。昨年の反省を踏まえて、今年は、一次資料(である英語の原文)を通して、こういった示唆を得られるよう精進したいと思います。