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財務諸表の性格

経営者が作成する財務諸表は、単に取引事実の記録を基礎とするばかりではなく、慣習として発達した会計処理の原則及び手続を選択適用し、(財務諸表の作成者である)経営者の主観的判断に基づいて作成されます。従って財務諸表は、「記録と慣習と期待の総合的判断」であって、主観的・恣意的性格を有すると言われます。実際、多くの予測や見積りが求められる現代においては、ビジネスを熟知し現場にも精通した経営者による予測や見積りが最善です。なせならトップダウンで、画一的・形式的な定量基準を設けるよりも、実態を踏まえた、より精度の高い予測や見積りが可能だ(と信じられている)からです(そのため経営者は、内部統制システムを適切に整備・運用する責任も負っています)。ところが例えば、減損処理については次のような(経営者の)説明を聞くことがあります。「前倒しで減損損失を計上した」「減損はしなくても良かったが翌期に影響を残さないよう手当てした」などです。減損会計基準は、本来(基準に)ヒットしたら(減損)処理するという、ある意味システマティックな基準でしょうか。だとすると「前倒し」「翌期に影響を残さない」は、やや趣旨が異なるように()感じます。