· 

山本博文[監修] (2017)『江戸の銭勘定』読了

以前『決算!忠臣蔵』を観て、『「忠臣蔵」の決算書』を読み終わったとき、当時の(金銭面)状況をもう少し知りたいと思いました。そこでこの本を手にしました。監修者は冒頭で、現代の価値に引き直すには色々な考え方があって難しいと述べています。そのため参考程度(の内容)かもしれません。しかし多くのことを楽しみながら知ることができました。

先ず換算レートについてです。この本では、1両=18万円・1(もんめ)3,000円・1文=30円としています。これによりますと、握り寿司一貫(4文=)120円・銭湯(8文=)240円・蕎麦一杯(16文=)480円・髪結い(24文=)720円・日本酒一升(250文=)7,500円・花魁(おいらん)揚げ代(12分=)27万円(1両=4)・金魚一尾(5両=)90万円となります。衣食住という基本的な生活の部分では、日本酒(が高い)以外、現代とあまり変わらない印象を持ちました。

次に知恵についてです。「江戸時代のリサイクル業者は、廃棄する以前に修理し再生させてい」たそうです。また「江戸では米を精米するため、米の胚芽部分が取れてしまいビタミンB1が失われるため、下半身が浮腫んで痺れ衝心(心不全)を起こす脚気を患って死ぬ人が多く、『江戸患い』とされたものの、江戸を出て雑穀を食べると快癒」することを知っていたそうです。感心しました。当時の江戸庶民の識字率は80%と世界一、民度も高かったのかもしれません。

最後はトリビアです。例えば以下です。(1)サンピン:最下級の武士は三両一人扶持の年収で「サン()ピン()」と呼ばれて軽んじられた。(2)油を売る:粘りのある油を容器に移すには時間がかかり、その間に世間話をしたことで仕事をしていないことを「油を売る」と言うようにもなった。(3)二束三文:鼻緒を「二足で三文」と売り歩く者も出たとされるが、一日売り歩いて生活できたのかと心配になる。まさに安い物の代名詞。(4)二八蕎麦:蕎麦一杯の値段が十六文であるからの二八説と、蕎麦粉八割につなぎの小麦粉二割からとする説があるが、十二文の安い蕎麦屋やうどん屋では「二六」としており、代価による。(5)居酒屋:酒屋の店先で飲むから。(6)十三里:行燈に書かれた「八里半」は、栗(九里)に近いうまさという洒落だが、京坂では「十三里」と表示され、栗(九里)より(四里)うまいとして売り歩いた。(7)お茶を挽く:当時の大夫は幕府評定所に茶汲みとして出向いており、客のいない遊女は茶を挽いたことで、水商売で閑なことを「お茶を挽く」と言うようになる。普段何気なく使っている言葉にも、意味や由来があることが分かりました。勉強になりました。