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J.D.ヴァンス、関根光宏[訳]・山田文[訳] (2017)『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』読了

この本は、米トランプ大統領が誕生した翌年(2017年)に出版されました。当時、なぜトランプは大統領になれたか?という視点から、しばしば取り上げられました。勿論、興味深い1冊でした。しかしその頃は、さすがに(トランプが)2(大統領を務めること)はないだろ

う、だから(わざわざ)読む必要もないだろうと考えていました。ところが、今年(2020)の大統領選挙を見ていると、共和党の候補者は、はなからトランプ大統領で決まりのようです(これに対して民主党は、スーパーチューズデーの投開票が終わり、候補者選びが佳境に入りました)。となると、トランプ政権がもう1(4)続く可能性が(50%は)あることになります。そこで今、遅まきながら手にとりました。筆者は、白人貧困層の中で生まれ育ったにもかかわらず、何とか-おそらく奇跡的に-イエール大学へ進学し、白人貧困層からの脱出を果たした、1984年生まれの男性です。筆者は自らの半生を振り返ることで、ヒルビリー(田舎者)の実態や東部アイビーリーグ出身者がエスタブリッシュメント層へ登りつめる様子を伝えています。それらを通して、日本にいては中々伺い知れない、白人貧困層の問題の根深さを理解することができました。読んで良かったです。なお筆者は、なぜトランプは大統領になれたか?という視点で(この本を)書いてはいないようです。ただ、「彼は、プロの市場調査より、自分の直感を信じるマーケティングの天才だ。長年にわたるテレビ出演や美人コンテスト運営で、大衆心理のデータを蓄積し、選挙前から活発にやってきたツイッターや予備選のラリーの反応から、『繁栄に取り残された白人労働者の不満と怒り』、そして『政治家への不信』の大きさを嗅ぎつけた」(410)、「なぜ彼らがこれほど情熱的になるかというと、トランプが、自分たちにわかる言葉でアメリカの問題を説明してくれたからだ」(414)()述べています。