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バルーク・レブ、フェン・グー、伊藤邦雄[監訳] (2018)『会計の再生 21世紀の投資家・経営 者のための対話革命』読了

本書は、近年の企業活動の高度化・複雑化・国際化に、利害関係者の多様化が加わって、従来の財務情報だけでは企業価値を説明できないという(筆者達の)認識の下、現在は無形資産が企業価値の源泉となっていることから、非財務情報を含む会計への変革の必要性を説いています。先ず認識については、①上場企業の時価総額に関する、B/Sの株主資本とP/Lの当期純利益の説明能力が、1950年代の90%から2013年には50%へ低下、②投資家による投資判断において、財務情報の有用性は非財務情報に比べて劣後といった(不都合な)事実が、エビデンスに基づいて示されています。次に無形資産については、在庫・設備・土地といった有形資産ではなく、特許・ブランド・顧客名簿など(の無形資産)が、現在は企業価値を創出していることが説明されています。更に変革の具体策として、無形資産に業種毎の特徴を加味した「戦略的資源・帰結報告書」の開示が提案されています。正直、会計(・財務会計)に携わる者としては、耳が痛い内容で(はありま)した。ただ本書は、会計そのものを否定しているわけではありません。実際、(言いっぱなしではく)変革の具体策も(同時に)示しています。現在のアメリカにおける会計への(1つの)見立てと処方箋を紹介してくれた価値ある一冊でした。ところで(本書の)原題は、”The End of Accounting”です。直訳すれば『会計の終焉』でしょうか。だとすると、随分物騒です。のみならず、(筆者達には)”The Death of Accounting”というアイデアもあったそうです。