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パオロ・ジョルダーノ、飯田亮介[訳] (2020)『コロナの時代の僕ら』読了

本書は、ローマで暮らす筆者による、新型コロナウイルス感染拡大の渦中にあった2020229日から34日までのエッセイを集めたものです。感染の広がる様子をビリヤードの球に例えたり、感染との最前線(1)である医療現場を水道の蛇口に例えたり、当時のローマの様子を、具体的かつ分かりやすく説明しています。そんな中で印象に残ったのは、著者あとがきとして日本語版に特別収録された、「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」です。「忘れたくないこと」として挙げられている、「ルールに服従した周囲の人々の姿」「最初の数週間に、初期の一連の控えめな対策に対して、人々が口々に『頭は大丈夫か』と嘲り笑ったこと」「結局ぎりぎりになっても僕が飛行機のチケットを一枚、キャンセルしなかったこと」「頼りなくて、支離滅裂で、センセーショナルで、感情的で、いい加減な情報が、今回の流行の初期にやたらと伝播されていたこと」などは、世界中で起こっていたかもしれません。本書の帯にある通り、「感染症とは僕らのさまざまな関係を侵す病」であるとしたら、起きてしまったことを忘れず、次に活かすことが、いつか来る(であろう)感染終息後の新しい社会の礎になるのだと思います。そのために、「家にいよう。そうすることが必要な限り、ずっと、家にいよう。患者を助けよう。死者を悼み、弔おう。でも、今のうちから、あとのことを想像しておこう。『まさかの事態』に、もう二度と不意をつかれないために」というメッセージに共感しました。