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ジョナサン・ハスケル、スティアン・ウェストレイク、山形浩生[訳] (2020)『無形資産が経済を支配する 資本のない資本主義の正体』読了

無形資産を改めて理解・整理することができました。次の3点が印象に残りました。

①無形資産の特徴(プロスコンス)が、4つのS(scalability:スケーラビリティ、synergy:シナジー、spill-over:スピルオーバー、sunk cost:サンクコスト)を通して、分かりやすく説明されていること。

[無形資産の特徴]

・スケーラビリティ:拡張が容易にできる(プロス)

・シナジー:組合せが容易で新たな効果を生みやすい(プロス)

・スピルオーバー:コピーされやすい(コンス)

・サンクコスト:転売が難しい(コンス)

有形固定資産の特徴(のプロスコンス)が逆になるという指摘も興味深く感じました。

[有形固定資産の特徴]

・スケーラビリティ:数量に限界があり拡張には限界がある(コンス)

・シナジー:物理的な距離によって組合せが限定される(コンス)

・スピルオーバー:物理的に隔離することでコピーを防ぐことができる(プロス)

・サンクコスト:市場を通した転売・転用ができる(プロス)

②無形資産への投資が拡大し重要性が増しているにもかかわらず、国民経済計算などにおいて適切に把握されていない現状は、社会全体で改善すべき課題であること。

③無形資産は、経営・金融投資・公共政策のあり方にも影響を及ぼすこと。そこにおいて会計は、必要な会計情報を提供しているかを問われていること。

なじみのある無形資産ですが、会計とは異なる切り口は新鮮でした。視野が(少しだけですが)広がった気がします。読んで良かったです。