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フォワードルッキング(FL)引当金

新型コロナウイルス禍が長期化する中で、FL引当金という、経済の将来予測に基づいて引当金を計上する方法によって、全国15の地方銀行が将来発生すると予測する損失を、前倒しで処理し始めたそうです。

出所:2021年8月27日付日本経済新聞 地銀、コロナ損失を前倒し処理: 日本経済新聞 (nikkei.com)

確かに「体力の範囲内で段階的にコロナ処理を進める手探りの状態」は、当面避けられないのかもしれません。しかし「段階的な小幅修正を繰り返し」「近い将来、不況期に入ると予測した場合、保守的に引当金を積み、景気が過熱しそうになると予測したら逆に引当金を取り崩す」「FL引当金の適用を先送りし、抜本的な引当金積み増しを避けた」「会計手法を微調整し、業種別に細かく見たり損失率を変えたり」「引当金を厚めに積んでいる」といった内容は、やや気になりました。またFL引当金(なるもの)に関して「国際会計基準は18年、米国会計基準は20年から将来予測に基づいて引き当てができるようようになった」とのことです。これは、損失評価引当金(貸倒引当金)の認識において、当該債権に将来起こる信用損失に基づいて引当金を計上する、予測信用損失モデルを指しているのかもしれません。この点、国際会計基準は「将来の営業損失に対して引当金を認識してはならず(IAS37.63)」「将来の営業損失が予想される場合には、資産の減損について検討する必要性が生じる(同65)」と定めています。同時にFL引当金を新しい方法で計上したのなら、会計方針の変更にあたるのでは?という素朴な疑問も湧いてきます。