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脱炭素と会計士・監査人の役割

企業に対して、二酸化炭素(CO2)排出量や他の環境問題について、誠実に開示するよう圧力が高まりつつあることから、会計士・監査人の役割が注目されています。

出所:2021年11月10日付日本経済新聞 [FT]企業監査、脱炭素の主役に 環境会計基準の整備を: 日本経済新聞 (nikkei.com)

現状、環境に関する評価基準は、任意の枠組みが乱立しています。もちろん、基準を統一しようという動きはあります。しかし、独自の基準を模索する動きもあります。このような状況下、世界大手の四大会計事務所は、監査対象の企業が抱える気候変動リスクが、より信頼できる形で監査結果に反映されていなければ、その企業の株主総会で、監査人の選任投票に反対票を投じるという通告を、資産運用会社24社から受けました。これは、会計士・監査人の役割に対する期待の裏返しと解されます。ところで、会計は、企業の経済活動を支えるインフラとして不可欠です。複式簿記の認識・測定・記録・表示というプロセスを経て導出され、可視化された数値情報(貨幣価値)は、資本主義経済において重要な役割を果たしてきました。したがって、会計士・監査人の守備範囲はあくまで会計処理にあるというのが伝統的な立場です。であれば、脱炭素の動きに伴う(新たな)環境に関わる開示は、果たしてその守備範囲に含まれるのか?という素朴な疑問が浮かびます。会計士・監査人の役割はもちろん、会計もwithコロナにおけるニューノーマル(新常態)を求められているのかもしれません。引き続き会計士・監査人の役割および会計(・会計学)のあり方を考えていきたいと思います。