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アメリカ証券取引委員会(SEC)による、気候リスク開示新ルール案

SECは、上場企業に気候変動リスクの開示を求める新ルール案を提案しました(*)。

(*)2022年3月22日付日本経済新聞電子版 SEC、気候リスク開示規則を提案 企業に排出削減促す: 日本経済新聞 (nikkei.com)

これによって投資家は、開示情報を基に投資先を選別したり、温暖化ガスの削減を促したりできるようになるとしています。実際ゲンスラー委員長は、「投資意思決定に有用な情報を投資家に提供する」ことを強調しているようです(**)。

(**)SEC.gov | SEC Proposes Rules to Enhance and Standardize Climate-Related Disclosures for Investors

この点、米バイデン政権は、気候変動対策や格差解消を重視しています。したがってESG開示基準の見直し(の1つ)である今回の新ルール案は、それに沿うものと思われます。

しかし素朴に考えて、企業-民間企業-の本分は、利益を最大化して税金を納めることです。したがってESG(やSDGs)は本来、民意を受けた-投票で選ばれた-政府が行うものではないでしょうか。

このように考えると、「気候変動政策を決めるのは連邦議会の仕事であり、SECの専門性や権限から外れていると」いう主張(*)や「SECが本来の権限や能力をこえて、エネルギー政策に影響力を及ぼそうとしていると」いう批判(***)にも、一定の理屈があるようにも感じます。

(***)2022年3月22日付日本経済新聞電子版 米、気候リスク開示で日欧と足並み エネ増産で反対論も: 日本経済新聞 (nikkei.com)

となると、本件ポイントは、投資家保護が与えられた役割であるSECが、(それを超えて)実質的に企業活動を規制する役割まで担おうとしているのでは?という点でしょうか。今後の議論を引き続きを注視したいと思います。