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中村忠(1996)『簿記の考え方・学び方』読了(再読)

GWの間に、本書をかれこれ20年ぶりに再読しました。学部で担当している会計学基礎の講義資料作成を念頭に、会計と簿記との関係について頭を整理する目的でした。おかげさまで、今読んでも得るところが多々ありました。

さて、会計と簿記との関係については、簿記と会計学(173~181頁)において、次の3つの考え方が示されています。

①会計学と簿記学は内容的に同一のものであり、単に程度の差に過ぎない。つまり初級会計学が簿記であり、上級の簿記学が会計学である。

②簿記学と会計学はともに企業の計算を対象とするものであるが、前者はその技術面を取り扱い、後者はその理論面を取扱う。

③会計学は評価を主目的とするのに対し、簿記学は評価を取り扱わない。

もちろんどれも首肯し得るものです。しかし筆者が言うように、②の立場を最も自然に感じました。なお、「簿記は会計情報をインプットし加工する装置であって、材料を流し込めばルールに従って処理し、その結果をアウトプットする。材料を流し込むかどうかは会計学が決める。」(195頁)点にもふれると、学生さんの理解がより深まるように思いました。また、「簿記の同音語:計上と経常、原価と減価と現価、償却と消却。遡及と遡求、更生と更正。」(46~48頁)を折々に紹介することで、学生さんの注意を引き寄せることが可能になるかもしれません。これからの講義に活かせればと思います。