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英BPによるシグナリング効果と調整後利益

英国石油大手のBPは、先日発表した2022年1~3月期決算で、ロシアからの事業撤退に伴う損失を、税引前ベースで255.2億ドル(約3.3兆円)計上したそうです。

出典:2022年5月3日付日本経済新聞電子版 BP、ロシア撤退損失3兆円 ロスネフチ株の価値ゼロに: 日本経済新聞 (nikkei.com)

損失の原因として、①19.75%を保有するロシア石油大手ロスネフチ株式価値をゼロへ切り下げたこと、②同社と手がけてきた合弁事業の減損損失を計上したことをあげています。

この結果、BPの最終損益は203.8億ドル(約2.7兆円)の赤字となりました。これは、四半期としては過去最大の赤字額です。しかしBPは、①これだけの損失を出してでもロシアから撤退するという経営の意思、②これだけの損失を出しても財務は盤石であり、負債削減が続いていることから自社株買いを追加実施するという経営の判断を、市場に伝えることができたのではないでしょうか(ロスネフチの取締役だったBPの現CEOと前CEOも、辞任しました)。難易度の高い2022年3月期におけるロシア事業の会計処理を通じて、シグナリング効果を発揮したように思います。

ところでBPは、「減損などの影響を除く調整後利益は、前年同期比2倍強の62億ドルと好調だった。」そうです。BPが採用している会計基準は、国際会計基準(IFRS)です。したがって、「調整後利益」について興味深く感じました(IFRSは、日本基準に基づく特別損益のような異常項目を分離して表示することを認めていないからです)。

この点BPは、以前にも、「特殊要因を除く調整後の純利益は、前年同期比39倍の33.2億ドルとなり、収益力は大きく回復した。」ことがあったようです。

出典:2021年11月2日付日本経済新聞電子版 BP79月最終赤字2900億円 評価損も収益力は回復: 日本経済新聞 (nikkei.com)

であれば、IFRSも日本基準に習って、段階別損益を表示することで、①基本的質的特性(目的適合性、表現の中立性)が高まり、②調整後利益といったプロフォーマ数値の表示は不要になるのでは?という素朴な疑問が浮かびます。