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人的資本の情報開示

政府は、今夏にも企業に対し、従業員の育成状況や多様性の確保といった人材への投資に関わる19項目の経営情報の開示を求めるそうです。出典:2022年5月14日付日本経済新聞電子版 スキル、女性登用「人的資本」の情報開示へ 政府指針: 日本経済新聞 (nikkei.com)

具体的には、①金融庁は、2023年度にも人的資本に関する一部の情報を有価証券報告書に義務付ける方針、②内閣官房は、金融庁の方針とは別に、人的資本の関わる幅広い情報の公表を求めるとのことです。確かに、対象とする企業や目的が異なるのであれば、複数のルールが存在し得るのかもしれません。しかし、③サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の設立に向けたSSBJ 設立準備委員会も設置されています。となると、人的資本の情報開示に関しては、3つのルールが併存することになるのでしょうか。

それはさておき、「開示を通じて人材への投資を促すことで無形資産を積み上げ、日本企業の成長力を高める。」「米企業は人材への投資で無形資産を積み上げ、株価を上げている。」とのことです。この点、例えば、IFRSの無形資産の定義は「物的な実態を伴わい将来便益の請求権」です。したがって、ここでいう無形資産が、会計上の無形資産を指すのであれば、「将来便益の請求権」を有さない「無形資産を積み上げ」ることは(会計上は)認められません。なお日本(の企業会計基準)における無形資産の認識要件は、「将来の経済的便益をもたらす蓋然性が高いこと」「取得原価について信頼性をもって測定できること」です。