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非財務情報の開示を巡る動きが活発化

金融庁の審議会は、今月公表した報告書で、有価証券報告書に気候変動などのサステナビリティ情報を記載する欄を新設することとしたそうです。ESGの取り組みを含む非財務情報の開示を巡る動きが、活発になっていることを受けた対応のようです。

出典:2022年6月20日付日本経済新聞電子版 IFRSの新基準対応迫る 情報開示見直す好機に : 日本経済新聞 (nikkei.com)

この点、投資家として財務情報以外の有用な情報(非財務情報)があり、投資家が企業価値推計のため知りたいというのであれば、教えてあげれば良いと思います。ただ、重要なものは金銭価値に置き換えられて、財務情報として提供されています。したがって、非財務情報を求める投資家は、金銭価値以外のことに関心がある?という素朴な疑問は浮かびます。

また、ISSB議長の「私たちの目的はより一貫性があり完全で、かつ比較可能、検証可能なサステナビリティ関連の財務情報をもたらす基準を開発することだ」というコメントは、IFRS財団定款の第2条IFRS財団の目的(a)「投資者、世界の資本市場の他の参加者及びその他の財務情報利用者が適切な経済的意思決定に役立つように、高品質で透明性があり、かつ比較可能な財務諸表その他の財務報告を要求する、公益に資するよう、明確に記述された原則に基づく、高品質で、理解可能、かつ強制力のある国際的な財務報告基準の単一セットを開発すること。」を思い起こさせます。

なお記事は、「開示を起点に投資家とエンゲージメント(建設的な対話)を実施し、フィードバックを得ながら経営を改善する。このサイクルを回すことが企業価値向上の鍵になる。」とまとめています。確かに、投資家に必要な情報を、より高い頻度でより詳しく提供することによって、情報の非対称性は解消され、市場の透明性が増し、企業価値向上に資するといった説明は、過去何十年に亘ってなされています。実際、会計ビッグバンを端緒として、「連結決算」「四半期開示」「内部統制」「IFRS」といった施策が導入されました。しかし、それらが果たした貢献と限界の総括(・小括)なしで、次の施策である「非財務情報の開示」に取り組むのは、やや慎重性に欠けるのではないでしょうか。現在は、経済が成長しており、需要>供給すなわち資金不足の状態ではないからです。

となると結局、時間はかかりますが、企業が力をつけて、活力を取り戻し、成長曲線を自ら描き実行するのを待つ以上の施策はないように思います。