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『かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと』鑑賞

東急文化村で開催されている、『かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと』を鑑賞しました。かこさとし(加古里子、1926年~2018年)は、「だるまちゃん」シリーズや『からすのパンやさん』など数多くの作品を世に生み出した絵本作家です。私も、かこの絵本と共に育った世代の1人です。

今回は懐かしい絵本に加えて、若き日に描いた絵画作品・創作の原点であるセルツメント活動(第二次世界大戦前に始まったボランティア活動で、医療・福祉などの支援のほか、子ども会の活動もあった。)時代の紙芝居・初公開となる絵本の原画といった貴重な作品や資料が展示されていました。思わず時間を忘れて、見入ってしまうものばかりでした。おかげさまで懐かしい一時を過ごすことができました。

さて副題である、『子供たちに伝えたかったこと』については、「子どもたちは、ちゃんと自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の力で判断し、行動する賢さを持つようになってほしい。その手伝いをするのなら、死にはぐれた意味もあるかもしれない。」というメッセージが、『未来のだるまちゃんへ』から引かれていました。

かこによるこのメッセージは、記憶にありました。しかし「死にはぐれた意味」について、「子どもの頃、僕の家は貧乏で、学費を出してもらえそうにないと考え、軍人の学校を目指した。僕はどんどん飛行機に熱中して軍人になろうと思ったが、近視が進んでなれなかった。その後、共に軍人を目指した仲間たちは特攻隊を志願し、亡くなった。戦後の食糧難では、目が覚めると今日はどうやって食べようか考え、生きるために食べるのではなく、食べるために生きて」おり、「僕も本来なら死んでいたはずで、生き残ったというより『死に残った』。僕は自分で判断して軍人になろうと思ったが、過ちだった。判断力がなく、世の中のことを知らなかった過ちをして、おめおめと生きている。この過ちを何とか自分で取り戻したいと考えるようになった。」という解説を通して、改めてかこ(やかこと同じ時代を生きた人たち)の凄みを感じました。

館内は、子供連れを中心に結構な賑わいでした。かこに対する関心の高さに加えて、「夏休み」「小学生以下無料」が奏功したのかもしれません。