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浜田康(2021)『市場の守り人:証券取引等監視委員会の使命』読了

筆者は、現役の証券取引等監視委員会委員です。公認会計士でもあります。

そのような筆者は、本書を「勉強ノート」と称されています。しかし「監視委員会にもっと力を」という思いが強く伝わる一冊でした。

具体的には、「法と会計の狭間」に着目し、問題提起と自らの見解がセットになって示されています。例えば、①法人の刑事責任の明確化、②課徴金制度の見直し、③会計専門裁判所の設立や紛議調停制度の見直しによる被害者救済の拡大などです。中でも、金商法の開示責任(粉飾決算)に関して、「決算や開示に責任を有する経営者や会社の責任明確化」によって、「ネガティブな監査報告を出しやすく」するという見解は、二重責任の原則の趣旨からも腹落ちするものでした。筆者の「政策提言」を興味深く受け止めました。