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米国におけるのれんの会計処理

米国が、のれんの償却を再導入する検討を停止したことが報じられていました。

出典:2022年8月24日付日本経済新聞電子版 「のれん」償却、海外で復活するか 米国で議論停止: 日本経済新聞 (nikkei.com)

これは、米国財務会計基準審議会(FASB)が、2022年6月15日開催のBoardで、約4年にわたって検討してきたのれんの事後の会計処理に関するプロジェクトについて、テクニカル・アジェンダ(検討事項)からの取り下げを決めたことを受けてのようです。

出典:2022年6月15日付FASB HP Tentative Board Decisions (fasb.org)

“Identifiable Intangible Assets and Subsequent Accounting for Goodwill. The Board discussed the future direction of the project and decided to deprioritize and remove the project from its technical agenda.”

この点、なぜ今(ごろ)取り上げたのか?という素朴な疑問が生じます。またのれんの償却については、良く知られているように、①のれんは被取得企業に存在していた超過収益力や当該企業結合によって新たに生じたシナジー効果で、将来の競争によって失われていくものなので償却すべきという見解、②のれんは良好な追加投資によってその価値が維持される(古くなるほど価値が増す場合もある)ものなので償却すべきではないという見解があります。更にいえば、そもそものれんを生じさせる会計処理(パーチェス法)の妥当性について、見直す必要はないのでしょうか。

このように考えると、「かつて日本の会計基準は『異質だ』『遅れている』とみられており、国際水準への引き上げが急務だった」かどうかはさておき、必要以上に「市場関係者の声」や「国際金融市場に与える影響」にとらわれることなく、会計基準としてのshould beを念頭に置いた検討・議論がなされればと思います。