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伊藤毅(2022)『ルールの世界史』読了

著者は、ルールの世界史を「信用」「創造」「普及」「育成」というルールの目的別に構成し、興味深いエピソードを交え論じています。例えば、①ラグビーとサッカーのルールが誕生した経緯、②蒸気自動車が世に出るにあたっての馬車業者とのルールを巡る攻防などです。またそれぞれの国や地域における特徴とルールの関係についても、分かりやすく解説しています。中でも、インターネットの出現によって「創造」が最も変化しており、①インターネットの世界では誰の創造物でも知的財産となりうる、②知的財産はアクセス数や課金ルールにより利益を生み出しうるという(知的財産に関する)指摘を興味深く受け止めました。

また、「その一方で、ルールが複数存在することで、ルール同士が切磋琢磨してより良いルールが生み出されるということもあります。・・・ルールを統一せず、別々のルールを作ることができるというのは、近代社会の大きな特徴ともいえます。」(p.52)「でも、別のルールを作ることは反逆でもなんでもありません。複数のルールは、互いの衝突さえうまく調整できれば、両立することができるのです。・・・複数のルールの併存を認め、人々がその時々でより良いルールを選択することができるのが、今の世の中であるといえます。」(p.53)という筆者の見立ては、会計基準に引き寄せても腹落ちするものでした。