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宮武久佳(2020)『「社会人教授」の大学論』読了

筆者は、元ジャーナリストの大学教授です。専門は、知的財産論・メディア・ジャーナリズム論です。

筆者とは専門分野は異なります。しかし同じように実務の世界からアカデミアの世界に転じて10年を超える先達が、大学について何をどう論じているかに関心があり、本書を手に取りました。

最も興味深かった点は、アカデミアの世界における自分の活かし方を熟知している点です。具体的には、「私は純粋にアカデミックな人間ではありません。学術論文の執筆にはさほど執着がありません。それよりも、求めに応じて、一般の人に対する講演や、学校の教員の目に触れるような教育雑誌への連載などが『私のすべき仕事』と思っています。」(p.202)と述べています。同時に、「企業人として成功した大物のビジネスマンは、・・・引き出しの数が少ないと思います。アカデミックな教員にはかないません。」(p.204)と分をわきまえている点も素晴らしいと思いました。

一方、「大学の教員は概して本来の業務でない輪番でやって来る委員会の仕事に深くコミットしません。評価に影響がないからです。」(P34)については、大学教員の仕事には、研究・教育・(委員会の仕事を含む)学務・(社会への)還元があることから、首肯しづらく感じました。