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千代田邦夫(2022)『経営者はどこに行ってしまったのか-東芝 今に続く混迷』読了

筆者は、2015年に東芝の不正会計問題が発覚したとき、公認会計士・監査審査会の会長を務めておられました。

そんな筆者が、①会計不正に手を染めた経営者(第1章~第6章)、②それを適切に監視・監督できなかった取締役会(第7章~第10章)という2つの側面から東芝事件の全体像を明らかにしています。

筆者による、①は東芝の財務基盤の脆弱性、②は統制環境の不備がそれぞれの真因という見立ては、基本に忠実で目新しさはありませが、だからこそ腹落ちするものでした。またメディア、中でも新聞記事について、「第一に、新聞記事がいつも正しいとは限らないということです。」(59頁)「第二に、新聞記事は、あくまで記者の目を通してであることに注意しなければなりません。」(60頁)という指摘は、東芝事件に限らず広く当てはまるものだと感じました。

時が経つと忘れがちになりますが、時が経っても変わらない教訓を思い出させてくれる一冊でした。