· 

福井義高(2016)『日本人が知らない最先端の世界史』、同(2017)『日本人が知らない最先端の世界史2』、同(2021)『日本人が知らない最先端の「世界史」不都合な真実編』読了

筆者は著名な会計学者です。日頃はご著書やご論文を拝読し、勉強させて頂いています。本書がそんな先生のご本とは知らず、タイトルに惹かれて手に取りました。ただ積読の期間が長く、今回3冊を通読しました。

3冊に通底しているのは、関心を抱いた事例を「現場の一次資料」に基づき掘り下げる筆者の手法です。もちろん英語を含めた複数の語学に堪能かつ博覧強記の筆者だから可能なことです。実際、「スターリンと毛沢東の関係」「インド独立の裏側」「好戦的なのは庶民ではなく知識層」「難民受け入れに係る極右の主張はそれほど的外れでもない」など取り上げられている事例は、いずれも興味深いものでした。今更ではありますが、好奇心やなぜ?という疑問を持ち続けようと思いました。

また以下(『日本人が知らない最先端の世界史2』p.317)に共感しました。

英米仏やソ連が行ったような「非文明国」に対する狡猾かつ傲慢な帝国主義的支配は日本人の手に余る仕事であった。21世紀の日本人に求められているのは、戦後70年講和にあるように「国際秩序への挑戦者となってしまった過去を、この胸に刻み続け」ることよりも、自分たちが少国民だという自覚ではあるまいか。我々は、他民族を巧妙に支配できる大国民ではないし、それを嘆く必要もない。しかし、少国民といえども、それがいかなる美名の下であれ他国に支配されることなく、国際社会において独立自尊の道を歩むことは可能である。もちろん、今日の日本人にも。

この点、日本がアジアの孤児(『日本人が知らない最先端の「世界史」不都合な真実編』終章)か否かはさておき、今日の私たちに「自分たちが少国民だという自覚」は不可欠ではないでしょうか。