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大下勇二(2018)『連単分離の会計システム:フランスにおける2つの会計標準化』、河崎照行(2019)『会計制度のパラダイムシフト―経済社会の変化が与える影響』読了

上場企業の連結財務諸表に対するIFRSの任意適用は、2009年にスタートしました。現在までの①適用社数は247社(7%)、②時価総額は日本企業全体の44%です。

ここで、IFRSに対する市場(企業)の評価を示すモノサシの1つを「適用社数」とすれば、大下が示すフランスの「会計システムの二元化に至るまでの会計標準化のプロセス (1)」や「大企業の会計制度と中小企業の会計制度の二分化が進行して」おり、「わが国では、IFRSの任意適用が容認されていることから、『国際資本市場の場』で資金調達や事業展開を図る企業(上場企業)には、積極的にIFRSの導入を推奨する 一方、『国内資本市場の場』で資金調達や事業展開を図る企業(とりわけ、中小企業)は、その影響が及ばないような制度設計が望まれる。」という河崎の主張(2)は、今後の行き方として検討に値するものだと改めて思いました。

(1)この点について大下は、「連結会計次元の会計標準化は個別次元と大きく異なり、株主・投資者の情報ニーズ指向、株主投資利益計算、会計実務専門家を中心とした基準づくり、企業の実務先行といった特徴をもつ。これらは、アングロ・サクソン諸国の会計に見られる特徴であり、連結会計次元の会計標準化はこれらを連単分離の形で取り入れてきた」(p.467)のに対して、「フランスのPCGが国際会計基準/国際財務報告基準の影響を受けながらも守り続けてきたのは、マクロ的な経済的概念に基づいた生産・付加価値重視の会計思考である。」(p.472)と述べている。

(2)IFRSについて河崎は、「決してIFRSの存在意義を否定するものではない。繰り返すまでもなく、IFRSが意義を有するのは、『国際資本市場』という『場』においてである。つまり、IFRSは国際資本市場というある種の『ローカルな場』で通用する会計基準に過ぎないということである。」(pp.392-393)と述べている。