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日本の国内総生産(GDP)の地位低下が示すもの

国内総生産(以下、GDPという。)に関して、日本が維持してきた「世界3位」という地位が危うくなっているそうです。出典:2023年2月19日付日本経済新聞電子版 日本の名目GDP、ドイツが肉薄 世界3位危うく - 日本経済新聞 (nikkei.com)

実際、2022年の日本のドル建てGDPは4兆2,300億ドルと、20年前の2002年の4兆1,800億ドルとほぼ同水準です。これに対して、同じ期間に約2倍の伸び(2兆800億ドル→4兆600億ドル)を実現した4位のドイツに迫られるのは当然でしょうか(1)

ところで「世界3位」の日本ですが、同1位のアメリカ(25兆ドル、日本の5.9倍)・同2位の中国(18兆ドル、同4.3倍)に大きく水をあけられています。また1人あたりGDPは、OECD加盟38ヵ国中19位です(2) 。近時、ISSBのアジア太平洋オフィスが(東京ではなく)北京に置かれたのも、「構造的な成長力の弱さ」や「少子高齢化や人口減少が進み、基本的な『体力』が落ちつつあること」が背景にあるのかもしれません。

今後、「賃金上昇によるデフレからの脱却と企業の稼ぐ力の回復」という難易度の高いタスクに挑むには、「世界3位」という地位に縛られず、「日本は小国で日本人は小国民」という現実を謙虚に受け入れることから始める必要があるように思います。

(1)更にインドが迫っている。国際通貨基金(IMF)は、2020年代後半、インドのGDPが日本(およびドイツ)を抜くと予想している。

(2)日本経済研究センターは、2020年代後半、日本の1人あたりGDPが韓国および台湾を下回るという試算をしている。