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磯田道史(2020)『感染症の日本史』読了

歴史家である筆者は、「一般人が感染症に罹患した史実を学ぶことにより、新型コロナによる被害防止に役立てること」を本書の目的としています。また、「感染症の被害防止に役立てる知恵には、医学的(自然科学)なものと歴史的(社会科学)なものがあり、正体不明なものには後者の知恵を生かすことが大切だ」と述べています。

今年5月に、新型コロナの感染症法上の分類が、現在の2類から5類に引き下げられることから、このタイミングで本書を手に取りました(1)。 

本書において、筆者は、感染症は都市化と人口増加の産物であるとした上で、日本人が天然痘・はしか・梅毒・スペイン風邪とどう戦ったかという歴史を通して、以下を結論として示しています。

①人間がウイルスより優秀なのは天然痘とポリオくらいです。撲滅宣言を出せたのは、天然痘だけです。ウイルスとは共存するしかない面があります。

②結論的には、ドイツが提唱して行っているように、病院のキャパシティを超えないように留意して、ワクチン開発まで経済活動を活発化しては制限して止め、またゆるめては活性化させるほかありません。経済か感染抑止かの二者択一ではなく、緩和と制限を繰り返しながら、弱毒化・ワクチン開発・症状緩和の技術開発まで、しのいでいくほかありません。

③ITやAIの技術が急速に発展するなかで、“人権コスト”のかからない「第一系列」的な「権威主義的体制」の方がむしろ効率的ではないのか、とも思わせてしまう状況です。「自由か管理か」という問題は、今回の新型コロナウイルス対策においても、重要なテーマのひとつとして様々に論じられています。

となると、これから新たなことを始める必要はなさそうです(2)。しかし、日々の「こまめな手洗いとうがい」「適切な睡眠と食事」・外出時の「マスクとアルコール・スプレー」は、今まで通り継続した方が良さそうです。

(1)新型コロナに関しては、理論疫学者および臨床医による本を先に読んでいる。

(2)他に、感染する条件として、①乾燥、②寒さ、③疲労、④寝不足、⑤混雑を挙げ、⑥持病がある場合は特に注意するよう述べている。