①米銀/シリコンバレーバンク（以下、SVBという。）の破綻に関して、「KPMGがSVBの監査結果を問題なしと発表した14日後に（SVBが）破綻した」という記事がありました。出典：2023年３月14日付日本経済新聞電子版 破綻の戦犯はベンチャーキャピタルか監査法人KPMGか - 日本経済新聞 (nikkei.com)
この点、会計監査人であるKPMGに与えられた役割は、SVBによる決算数値の正確性を保証することです。したがって、監査報告書日以降の（SVBの）破綻をKPMGの責任(1)とするのは、筋違いかもしれません(2) 。
②スイスの金融大手/クレディ・スイス・グループ（以下、クレディ・スイスという。）は、「2021年12月期と2022年12月期の財務報告の内部管理に重大な弱点があった」と発表しました。出典：2023年３月14日付日本経済新聞電子版 クレディ・スイス、財務報告の内部管理に「重大な弱点」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
この点、「22年度の財務諸表の監査を担当したプライス・ウォーターハウス・クーパー（PwC）は、内部管理の有効性について反対意見を表明した」そうです(3)。クレディ・スイスが、「９日、米証券取引委員会（SEC）から問い合わせを受けて、年次報告書の発表を『短期間』遅らせると明らかにしていた。SECから8日に、19年度、20年度のキャッシュフロー計算書の修正などに関する『技術的な評価』
に関する連絡があった」ことも、PwCの意見表明に影響を与えたのかもしれません(4) 。
(1)記事では「戦犯」という言葉が用いられている。
(2)ただし継続企業の前提（Going Concern）について、監査報告書でふれる必要はなかったのか？という点は、検証が必要であろう。
(3)内部管理は、内部統制システム（an internal control system）のことだと思われる。出典：クレディ・スイス「2022年12月期アニュアル・レポート 」（p.412）太線は引用者。
Report on other legal and regulatory requirements
During our audit, performed in accordance with article 728a paragraph 1 item 3 CO and PS-CH 890, we noted that an internal control system has been designed by management for the preparation of financial statements according to the instructions of the Board of Directors. However, we noted that management did not design and maintain an effective risk assessment process to identify and analyze the risk of material misstatements in its financial statements within this system as described in note 1 to the accompanying financial statements.
In our opinion, except for the matter described in the preceding paragraph, an internal control system exists which has been designed for the preparation of financial statements according to the instructions of the Board of Directors.
(4)その後クレディ・スイスは、スイス金融最大手USBによる買収に合意した。出典：2023年３月20日付日本経済新聞電子版