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映画『逆転のトライアングル』鑑賞

『逆転のトライアングル』は、2022年、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、パルムドールを獲得したスウェーデン映画(1)です。

この作品は、難破した豪華客船の乗客と乗員たちが、漂着した無人島でサバイバル生活を送るうちに、思わぬ逆転現象が生じる様子を通して、「ファッション業界とルッキズム」や「現代における階級社会」について、問うています。

主な登場人物は、 ①若き美人モデルでインフルエンサーのヤヤ(乗客)、 ②若きイケメンモデルだが最近やや落ち目のカール(乗客)、 ③年配女性で見た目も普通な船のトイレ清掃人のアビゲイル(乗員)です。この3人ですが、前半(2)は①と②のみが登場します。後半(3)になると③が登場し、類まれなサバイバル能力(4)によって、それまでの人間関係(5)を逆転させます。

この作品をどうとらえるかは、観る人による(6)のだと思います。しかし例えば、シンプルに「ブラック・ユーモアに満ちたコメディ」とするには、滑稽な登場人物の描かれようが、逆に物悲しく感じました。鑑賞後は、爽快感というよりは、色々考えざるを得ない、何とも言えない気持ちになりました。

(1)監督のリューベン・オストルンドは、史上3人目となる2作品連続のパルムドール受賞である(前作は「ザ・スクエア 思いやりの聖域」)。

(2)この作品は、1.ヤヤとカール・2.ヨット・3.島の3部構成である。ここでいう前半は、1と2を指す。

(3)3を指す。

(4)例えば、海に潜って魚を採り、火を起こして調理する能力。

(5)力関係または主従関係と言えるかもしれない。

(6)特にラスト・シーンは解釈が分かれよう。