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PBR1倍割れの対応策は一足跳びで株主還元?

東京証券取引所(以下、東証という。)は、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る上場企業などに、株価水準を引き上げるための具体策を開示・実行するよう求めました。出典:2023年3月31日付日本経済新聞電子版 東証、低迷日本株に警鐘 PBR1倍割れで改善策要請 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

この点、①東証が、1倍割れの企業が多いことに危機感を強めていることは理解できますし、②企業の1倍割れが、特殊要因による一過性のものではなく常態化しているとすれば、何らかの対応が必要(1)だとは思います。しかし、ほぼ同じタイミングで、企業による株主還元強化の記事(2)に接すると、PBR1倍割れの対応策は一足跳びで株主還元?という素朴な疑問が生じます。例えば、①株主は中朝的な成長のための投資を求めないのか?、②経営者は従業員や取引先へ十分な還元を行っているのか?といった点です。近時は、③会計もストック重視でフローを疎かにしているところ(3)があるのかもしれません。

ここは一旦立ち止まり、あるべき姿およびそのための対応策を、丁寧に議論する必要がある(4)のではないでしょうか。

(1)この点については、以前も述べた

(2)例えば、2023年3月31日付日本経済新聞電子版 自社株買い16年ぶり最高、減益でも豊富な資金で株主還元 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

(3)企業が継続する以上、フローの重要性は不変である。

(4)東証が期待するのも、企業が資本コストや資本収益性を意識しながら持続的に成長を目指す姿であり、自社株買いや増配のみの対応や一過性の対応を期待するものではない、と述べている。出典:2023年3月31日付東証マーケットニュース(資料1、p.1)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)