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日野原克巳(2022)『経営危機時の会計処理-レオパレス21は難局をどう乗り越えたか-』読了

本書は、施工不良が発覚し、経営危機に陥ったレオパレス21(1)において生じた会計・監査の様々な課題について、現場(である財務経理部)がどう対応したかを振り返ったものです。具体的には、課題を「引当金」「偶発債務」「継続企業の前提」「繰延税金資産」「減損」「収益認識」と列挙し、それぞれに対して、①背景、②会計基準、③会計実務、④監査法人との協議、⑤振り返りという観点を当てはめています。

筆者は、課題を明確にしている上に、会計の専門家(2)です。したがって、現場目線・実務目線の思いと苦労(3)が良く分かりました。同じ会計に携わる者として、心強く感じました。一方、「IFRSで頻出する『公正価値』という言葉にも違和感を覚える。『公正』かどうかは神のみぞ知るのであり、われわれ人類が『公正』かどうかを判断するなど、ずいぶん不遜な話ではないだろうか。」(p.166)という指摘は、日頃当たり前に使っている言葉や概念について、再検討するきっかけを与えてくれました。ありがとうございました。

(1)プライム市場。証券コード8848。

(2)公認会計士。監査法人のパートナーを経て、2015年レオパレス21入社。

(3)例えば、「しかしながら、債務超過かどうかとか、業績はどうかといった財政状態や経営成績の話ではなく、まずはキャッシュの流出を防がないことには企業の存続そのものが危うくなってしまう。」(p.78)、「数字は絶対である。」(p.109)、「会計は『常識』であり、腹落ち感が求められる。」(p.176)。