上野先生(1)は、本書において、会計の科学性とその論理性を、多くの研究者の研究成果を辿り分析することを通じて明らかにされています。
具体的には、前段(第1章~第4章)で会計の科学性について、中段(第5章~第7章)で会計の論理性について検討された後、後段(第8章~第9章)でまとめをされています。
会計の科学性については、私には抽象度が高く、理解するには能力不足でした。しかしそこで紹介されている、代表的な会計学者(2)の研究成果を体系的に知ることができて有意義でした。会計の論理性については、会計責任説が本質(3)だと述べておられます(4)。この点、現代会計の通説からは、やや距離があるようです。しかし本書における研究成果の分析とその結果は、上野先生のご見解を首肯し得るものにしています。
今回は、正直何とか通読したレベル(5)です。本書を手がかりにして、会計とは何か?会計の本質はどこにあるのか?という点について、考えていきたいと思います。
(1)ご専門は会計上の利益概念である。博士論文の副査としてもご指導頂いた。
(2)マテシッチ(第1章)、シュミット(第2章)、スターリング(第3章・第4章)、井尻雄士(第5章・第9章)、コジオール(第8章)。
(3)会計の本質は説明責任を果たすこと。情報を提供し意思決定に役立ててもらうことが主ではない。
(4)また語用論・条件付規範理論が、会計の論理性を支えていると述べられている。
(5)研究書を読み解くには未だ未だ力不足である。