· 

田口聡志(2020)『教養の会計学-ゲーム理論と実験でデザインする-』読了

本書は、経済学の領域であるゲーム理論(1)と(経済)実験(2)を通して、会計とは何か?を問うユニークかつ興味深い書籍です。(会計本にありがちな)仕訳や財務諸表の説明は、ほとんどありません。その代わり、各章ごとに会計に関するトピックが取り上げられ、コンパクトにまとめられています(3)。したがって読者にとって、読みやすく分かりやすい内容となっています(4)

読後、会計とは何か?を改めて考えると、少なくとも無機質な計算システムではないと言えるように思いました。実際、企業の経済活動を貨幣価値に換算し利益を求めるには、準拠すべき社会的ルールと選択が求められ、いずれにおいても、人間による意思決定がなされるからです。

なおAIの活用により会計の重要性が下がるのでは?といった、世の中の懸念に対する、①むしろAIの活用により会計はより高度化する可能性があること、②ただしそのような近未来において会計に求められる「教養」として、「会計の多様性を捉える力(多様な視点から捉える力)」と「そもそも論を絶えず問いかけることのできる力(本質を問いかける力)」が不可欠であること、という筆者の見立ては腹落ちするものでした。勉強になりました。

(1)ナッシュ均衡や囚人のジレンマなどの基礎概念が紹介されている。

(2)公共財供給ゲームや贈り物ゲームなどの主要テーマが紹介されている。

(3)12章と章は多い。しかし1つ1つの章がコンパクトにまとめられている。

(4)更に深く知りたい読者には、各章の終わりに「読書案内」が用意されている。