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石川純治(2020)『楕円の思考と現代会計―会計の世界で何が起こっているか―』読了

筆者は、現代会計を楕円で予測しづらいラグビーボールに見立てています。楕円が不安定なのは2つの中心があるからですが、筆者は、現代会計にも2つの中心があると言います。1つは伝統型の枠組み、もう1つは現代型の枠組みで、2つの枠組み( ①系Ⅰ伝統型、②系Ⅱ現代型)と7つの特徴軸(1~7)を以下のように整理しています(1)

1 ストック/フローの関係 ①フロー志向(フロー→ストック)、②ストック志向(ストック→フロー)

2 計算の基点 ①当初認識時、②特定時点

3 会計枠組の思考 ①配分、②価値評価(直接的再測定)

4 将来収支の確定性 ①確定的(固定的)、②不確定(変動的)

5 資産・負債の評価 ①原価・償却原価、②時価(公正価値)

6 簿価決定のあり方 ①連続・フロー配分型、②非連続・ストック評価型

7 利益決定のあり方 ①フローの配分計算、②ストックの価値評価差額

そして、利益計算を重視する伝統型と資産・負債の適切な開示を重視する現代型の橋渡しをするのが、その他の包括利益(OCI, Other Comprehensive Income)とリサイクリングだと言います。この点についても、紙幅を割いて丁寧に説明されています(2)

本書を通して、2つの中心がある楕円を通して現代会計を見ることで、①真実は必ずしも1つではないこと、②複数の視点からの考察が重要であることが良く分かりました。今後に活かす所存です。

(1)出典:図表1 2つの枠組(系)の対照比較-会計枠組のハイブリッド構造-(p.119)。

(2)例えば、Ⅰ楕円の思考と現代会計:2 PL脳は病なのか-ファイナンス思考と現代会計、3 ハイブリッド会計の検証-何が矛盾、その出所は、Ⅲ全体史からの視点:8 大世界史の中のIFRS-新自由主義とIFRS、Ⅳ制度会計の現代的論点:9 現代会計の焦点-純損益、包括利益、OCI、11 伝統枠からの論点-収支の枠組と資産分類・測定基礎。