· 

JICPAによる研修「新しい資本主義の下の適正分配経営」に参加する

先日、JICPAによる研修「新しい資本主義の下の適正分配経営」に参加しました。

講師はスズキトモ先生でした。スズキ先生は、長年オックスフォード大学で主任教授を務められました。帰国後は、早稲田大学で教鞭を執られるかたわらで、現政権の政策(1)に影響を与えている高名な方です。

スズキ先生のご主張は、①わが国の失われた30年は、「生産性が上がらなかったことによる失われた30年」ではなく、「生み出された利益が必要なところへ分配されなかったことによる失われた30年」であり(2)、②利害関係者に分配する付加価値は存在するので、③「利益最大化経営」から「付加価値適正分配経営」へ舵を切ることが必要、というものです。実際、公表データに基づく分析結果およびシュミレーションは目から鱗が落ちるものでした。

一方、僭越かつ勉強不足ながら、①会計の目的は投資家の意思決定有用性(のまま)で良いのか、②拠出資本の一部でありながら配当を制限されない項目が増えているという指摘(当日資料p.22)はその通りだが、留保利益と配当限度の関係からはどう見るか、③(従業員持株会はともかく)取引先持株会を安定株主としてカウントしてはという提案(同p.29)は「持合株式」を惹起させ得るが、という点は気になりました。

先ずは、ご著書である「スズキトモ(2022)『「新しい資本主義」のアカウンティング-「利益」に囚われた制塾経済社会のアポリア』中央経済社」を精読し、改めて検討したいと思います。ありがとうございました。

(1)新しい資本主義と称されている。例えば、四半期報告書の見直しや新たな分配政策。

(2)「株式・証券市場制度の逆機能の20年」という見立ても興味深かった。