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分配可能額を巡る企業と監査法人の責任

ニデックが、会社法などで定められた分配可能額を超えて配当や自社株買いを実施していたことについて、同社が監査法人の見落としに言及したため、大手監査法人が内部で注意を呼びかけているそうです。出典:2023年7月24日付日本経済新聞電子版EY新日本やPwCあらた、分配可能額で内部に注意喚起 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

この点、財務諸表を作成する責任は企業にあります(1)。したがって「分配可能額の計算は会社自らの責任で行うべきもので」す。一方、「会社法の計算書類では利益処分案は廃止となり、分配可能額も監査対象から外れた」ことから、監査法人が(事前確認はともかく)事後確認まで不要と言い得るかどうかは、慎重に検討する必要がありそうです。

というのも、確かに、会社法の導入で利益処分案は監査対象から外れました。しかし、BSの純資産には、配当実施後の剰余金や自社株買い実施後の自己株式が表示されます。株主資本等変動計算書では、配当額や自社株取得額が表示されます。したがって、財務諸表の信頼性を保証する監査法人にとって、無関係とは言い切れないように思うからです。

(1)企業は財務諸表の作成に責任を負い、監査法人は(企業が作成した)財務諸表を監査する責任を負う。二重責任の原則と呼ばれ、企業は第一義の責任を負い、監査法人は第二義の責任を負う。