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デビッド・スーシェ[著]・ジェフリー・ワンセル[著]、高尾菜つこ[訳](2022)『ポワロと私-デビッド・スーシェ自伝-』読了

デビッド・スーシェ(1)の「名探偵ポワロ」は、NHKのBS放送で観ていました。

本書でデビッド・スーシェは、ポワロとの様々なエピソード(2)を、自らの人生に重ねつつ語っています(3)。撮影時の楽しさや緊張感が伝わってくるとともに、全70作品の共演者とのエピソード(4)も紹介されており「名探偵ポワロ」ファンには興味深い一冊でした。

同時に、①ポワロを演じるにあたって、アガサ・クリスティーの原作を全て読み、(ポワロの)歩き方・話し方・習慣を自分のものにした努力、②「名探偵ポワロ」スタート後、次のseasonに続くかどうかという不安(5)など画面からはうかがい知れない苦労を印象深く感じました。

俳優は、特定の役にはまるとイメージが固まるリスクがあります。一方、他の俳優はイメージできない「ハマリ役」を得ることもあります。デビッド・スーシェのポワロは、原作の風貌や人柄そのままの「ハマり役」でした(6)。デビッド・スーシェ自身も、様々な苦労はありながら愛着を持って演じていたことが良く分かりました。今後再放送(再々方法?)があれば、是非もう一度観たいと思います。

(1)ポワロを25年間演じ続けたイギリスの俳優。

(2)出会いや撮影秘話など。

(3)本書は自伝書でもある。したがってポアロ以外の、舞台俳優としての仕事や日常生活についても語っている。

(4)例えば、①「ホロー荘の殺人」に出演したエドワード・ハードウィックは、ロイヤル・シェークスピア・カンパニー時代からの親友、②「複数の時計」に出演したトム・バークの父親デヴィッド・バークとは昔からの知り合いで、トムのことは赤ん坊のころから知っていた。

(5)デビッド・スーシェは、①舞台・映画・(「名探偵ポワロ」以外の)ドラマへの出演オファーを受けると新seasonのポワロを演じることができず、②オファーを断り新seasonが始まらない(打ち切りになる)と仕事がない、というジレンマに直面していた。

(6)他に「ハマり役」といえば、①ジェレミー・ブレットの「シャーロック・ホームズ」、②ショーン・コネリーの「ジェームス・ボンド」、③ピーター・フォークの「刑事コロンボ」が思い浮かぶ。