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桜井久勝(2023)『利益調整 発生主義会計の光と影』読了

本書は、発生主義会計の観点から利益調整に焦点を当てた財務会計の研究書です。

先ず、利益調整を「会計基準が許容する範囲内で利益数値を意図的に増減させる操作」と定義した上で、①会計方針や会計上の見積もりの変更による「会計的利害調整」と、②企業活動そのものの変更による「実体的利益調整」に分類しています 。

次に、発生主義会計の「光」として、取引例を通して、発生主義会計は現金主義会計よりも優れていると述べています 。一方、会計方針や会計上の見積もりに関する経営者の判断が利益調整目的でなされる場合を「影」としています。

また、公認会計士監査の強化が会計ビッグバンに一役買ったことなど会計プロフェッションの役割にも触れています。

そして、①会計方針や会計上の見積もりに関する判断を経営者に委ねる現在の枠組みは維持しつつ、②発生主義会計の「光」と「影」を踏まえた上で、③「会計的利害調整」を抑制する制度設計を提言しています。

他にも、株価や会計情報に関する研究が資本市場における価格形成に影響を与え、(結果として)資本市場の機能強化につながる可能性を示しています。

財務会計研究に「光」をあて、(財務会計研究は)資本市場や企業活動に貢献することを示す本書は、2024年の抱負を定めたこのタイミングにぴったりの1冊でした。ありがとうございました。