· 

大日方隆(2023)『日本の会計基準 Ⅰ確立の時代』読了

大日方先生による『日本の会計基準』は、全3巻・計1,400頁超の大著です。そこでは、第二次世界大戦後から現在に至る間の日本の会計基準が、いつ・どこで・誰によって・どうして・どのように開発されたかについて、時代に沿って、1つ1つ丁寧に紐解かれています。

第1巻のⅠ確立の時代(1)は、1945年(企業会計原則)から1980年代半ば(証券取引法会計)が対象です。正直知らないこと、目から鱗が落ちることばかりでした(2) 。中でも印象深かったのは、①当時の日本は会計基準の過少供給状態(3)で、②その状態の日本(の会計基準)を支えていたのは、規制当局である大蔵省と民間組織である日本公認会計士協会だったという指摘です(4)。大変勉強になりました(5)。第2巻・第3巻にも食らいつきたいと思います。

(1)第2巻はⅡ激動の時代、第3巻はⅢ変容の時代。

(2)改めて自らの浅学非才を思い知らされた。

(3)例えば、「企業会計審議会の主力は学者委員だったという事実認識については、異論がないであろう。その体制は、行政に権威づけを望んでいた規制当局(大蔵省)と「企業会計原則」および企業会計審議会に権威づけを望んだ学者、双方の思惑が一致した結果である。その体制によって会計基準を開発・作成する状況が50年近くも続いたことにより、日本の会計基準は過少供給状態となり、今世紀の初頭には会計制度及び会計基準は海外に比して大幅に遅れることになった」(p.364)と述べられている。

(4)主役は企業会計審議会だと思っていた。

(5)仮説を検証する際、国会審議における関係者の発言や与野党の質疑にまで踏み込まれていることも勉強になった。