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小佐田定雄 ①『枝雀らくごの舞台裏』(2013)、②『米朝落語の舞台裏』(2015)、③『上方らくごの舞台裏』(2018)』読了

筆者は1952年生まれの落語作家です。1977年、桂枝雀に新作落語『幽霊の辻』を書いたことを端緒に、1987年に落語作家専業となりました(1)。その後、上方落語の新作を書いたり江戸落語を上方化するなど幅広く活躍し、現在までに260席の落語を手がけています。

そんな筆者は、①爆笑王と呼ばれた桂枝雀(1939年-1999年)、②枝雀の師匠で上方落語の復興に尽力し自らも人間国宝に認定された桂米朝(1925年-2015年)、③枝雀や米朝が活躍した上方落語、それぞれの舞台裏を三部作として上梓しています。今回はそれらを楽しみました 。

先ず枝雀です。筆者は枝雀の持ちネタ48席を中心に、それぞれのあらすじやエピソードを紹介しています。枝雀の人となりが伝わってくるとともに、(枝雀の)芸への打ち込み方が生半可ではなかったことが良く分かりました(3)

次に米朝です。筆者は米朝の代表的な演目40席をピックアップし、それぞれのあらすじやエピソードを紹介するとともに、全集やDVD・CDのどこに(40席が)入っているかを詳述しています。上方落語四天王の1人と称された米朝が、自らの芸を磨くことはもちろん、上方落語の復興に粉骨砕身する様子が印象的でした。

最後は上方です。筆者は上方落語を代表する38席について、あらすじやエピソードに加えて、米朝はじめ上方落語を支えて今は亡くなられた噺家との思い出を綴っています。中でも、NHKのブラタモリでタモリが見つけた資料を鶴瓶が口演したという「山名屋浦里」、鳴り物発祥の地である上方落語ならではの「お囃子さん列伝」を興味深く感じました。三部作それぞれのキーワードを、①愛、②敬意、③感謝とすると、共通するのは人に優しい温かさでした。

今回は「舞台裏」を楽しみました。今度は実際の落語を観てみたいと思います。また筆者は『新作落語の舞台裏』という本を出しているそうです。こちらも時間を作って読んでみようと思いました。

(1)その間(約10年間)は(サラリーマンとの)二足の草鞋を履いていた。

(2)落語は「日本の話芸」というNHK/Eテレの放送を週1回観ている。その中で上方落語が演じられることがあり、三部作に関心を抱いた。

(3)落語の研究には熱心。それ以外は無頓着。