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自己創設無形資産の減損

大塚ホールディングスは、徘徊など認知症が原因の行動を抑える薬の臨床試験(治験)を中止し、新たに減損損失を約1,000億円計上すると発表したそうです。出典:2024年5月22日付日本経済新聞電子版大塚ホールディングス、認知症関連薬で減損1000億円 一転減益に - 日本経済新聞 (nikkei.com)

同社が採用する国際会計基準(IFRS)では、良く知られているように、開発局面(development phase)に関する支出について、6要件(1)全て立証(demonstrate)できる場合に限って、無形資産として認識(2)されます。本件は、当初認識要件を満たしたものの、「主要評価項目で目標とする結果を得られ」ず、「統計的な有意差が認められなかった」ようです。なお当初認識要件を満たさないことが明らかになったのが(今年の)2月だとすれば、本件損失の帰属期間は2023年12月期なのか2024年12月期なのかという点は興味深いところです。(1)IAS38.57は次の通り限定列挙している。①無形資産を完成させることが技術的に可能であること、②企業が無形資産を完成させ、使用・売却する意図を有していること、③企業が無形資産を使用・売却する能力を有していること、④無形資産から経済的便益を引き出す手法(市場や使用形態など)を特定できること、⑤無形資産を完成させ、使用・売却するために必要な資源を利用できること、⑥開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性をもって測定できること。

(2)研究開発費について日本基準(研究開発費等基準三)と米国基準(ASC730-10-25-1)は、(資産計上を認めず)発生時の費用処理を求めている。