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Substance over formを考える

セブン&アイ・ホールディングス(HD)のジョセフ・マイケル・デピント取締役への巨額報酬に関する記載内容が、株主総会の招集通知と(株主総会後に開示された)有価証券報告書とで乖離が大きいと議論を呼んでいるそうです。出典:2024年6月19日付日本経済新聞電子版セブン&アイHD、「巨額」役員報酬で波紋 招集通知と有報、記述にずれ 「任意開示」企業に温度差 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

この点、①会社法に基づく招集通知では単体の役員報酬のみの開示、②金融商品取引法に基づく有価証券報告書では子会社を含めた開示、また1億円以上の場合は個別開示という差異があることから、「現行法制上、適法な対応であり、やむを得ないと思う」という専門家のコメントが紹介されています。しかし続いて、「ただここまで金額の乖離が大きいと開示のあり方などが議論になる可能性あるだろう」と述べていることからも、本件の難しさ(悩ましさ)が分かります。

今週、大学院でのテーマ(の1つ)が「自発的ディスクロージャ―とIR」だったこともあり、(本件について)院生の皆さんと議論しました。もとより結論には至りませんでした。しかしそれぞれの立場に基づいて(1)、実質(substance)と法的形式(form)を考える機会になりました(2)

(1)整理すると、①正しい対応だった(現行法に沿っているから)、②正しい対応ではなかった(現行法に沿ってはいるが、利害関係者にsurpriseを生じさせることは予測できたから)、③十分な対応ではなかった(現行法に沿ってはいるが、かかるsurpriseを生じさせない工夫を取り入れている他社事例もあるから)という3つの立場に分かれた。

(2)また、①当事者か、②第三者かで立場を変える例もあった。