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会計監査人の矜持(凄み)

ENECHANGE(1)は、あずさ監査法人から辞任の申し出があり(2)、会計監査人をあずさから変更すると発表したそうです。出典:2024年7月5日付日本経済新聞電子版エネチェンジ、あずさ監査法人を変更 会計処理問題受け - 日本経済新聞 (nikkei.com)

また同社は、電気自動車(EV)充電事業の会計処理を巡る問題(3)を受けて提出を延期していた2023年12月期の有価証券報告書を関東財務局に提出しましたが、非連結としていたEV充電事業の特別目的会社(SPC)を連結範囲に含めたことで、2024年2月に公表した決算に比べて赤字幅が拡大し、14億円の債務超過になったとのことです。出典:2024年7月9日付日本経済新聞電子エネチェンジ、14億円の債務超過に 有価証券報告書提出 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ここで、あずさは(ENECHANGEの)有報提出に際して監査報告書(KAM)にどのような記載(対応)をしたのだろう?という素朴な疑問が生じました。そこで(あずさの)監査報告書(4)を閲覧したところ、KAMは詳細かつ読み応えのあるものでした(5)。中でも、「経営者確認書の入手」における「監査上の対応」として挙げられている「各監査役からの宣誓書の入手(6)」について、ここまでやったのか(やらざるを得なかったのか)という驚きと会計監査人の矜持(凄み)を感じました(7)

(1)東証グロース上場(証券コード4169)。

(2)辞任の理由は、「監査の前提となる信頼関係が低下し、今後の監査契約を継続することが困難になった」ためと説明している。

(3)あずさが同社のEV充電事業の会計処理に不正があったと指摘した。しかし外部調査委員会は不正を認めなかった。

(4)有価証券報告書(pp.1-180)の最後(pp.167-180)に備え付けられている。

(5)多くの紙幅(pp.167-174)が割かれている。

(6)経営者の誠実性に疑義があると評価したため、以下の手続を実施した上で、経営者確認書を入手した。その1つが、「経営者が経営者確認書において虚偽の陳述をするリスクに対応するため、各監査役による適切な是正措置が講じられていることを各監査役からの宣誓書の入手により確認した」こと、もう1つが、「経営者確認書の信頼性に疑義はない旨の宣誓書を取締役会会及び各監査役から入手した」こと。

(7)同時に、近時の監査意見不表明監査役による損害賠償請求と同様、コミュニケーションと信頼関係の重要性を再認識させられた。