· 

藤原正彦(2022)『日本人の真価』読了

筆者(1)の本を手に取るのは『国家の品格(2)』以来でした。

筆者は、旧満州からの過酷な帰国体験および両親の生き様を通して、日本人の真価は「教養」「品格」「ユーモア」にあり、「惻隠という日本人の良さ」を失わないよう生きたいと述べています。なお「英語教育」「グローバル資本主義」に対する厳しい(negativeな)姿勢は不変です(3)(4)

もとより筆者の主張が全て腹落ちするわけではありません。しかし何年かに1度、筆者の本を手に取るのも悪くありません。なお、①お寺の掲示板で見つけたという「これからがこれまでを決める」という言葉(5)、②小学校の図画工作の先生が安野光雅(6)だったこと、③父/新田次郎が、直木賞受賞時に芥川賞受賞で同席していた石原慎太郎のことを「生意気な小僧だよ」と評したことを、後年の対談の際、本人に直接伝えたというエピソードは、興味深いトリビアでした。

(1)数学者。1943年旧満州生まれ。父は新田次郎、母は藤原てい。

(2)2005年出版。そこでは、①論理と合理性頼みの改革では社会の荒廃を食い止めることはできず、②論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神によって、国家の品格を取り戻すと述べている。

(3)伝える手段である英語教育よりも、伝える内容(日本語、日本の歴史、日本の文化)の教育が大切だから。

(4)行き過ぎたグローバル資本主義がもたらす経済至上主義による犠牲は、計り知れないから。

(5)「これからがこれまでを決める」という視点は中々ない。

(6)画家(1926年~2020年)。画家として自立するまでは小学校の教員をしていた。筆者はラジオ番組に一緒に出演したこともある(らしい)。