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映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』鑑賞

この作品の舞台は、1970年代初頭、ベトナム戦争下のアメリカです。

ボストン近郊にある全寮制の名門バートン校の生徒や教師は、そのほとんどが、冬休みは家に帰り、クリスマスと新年を家族と共に過ごします。しかし中には、寄宿舎に残らなければならない人もいます(1)

ここでは、それぞれの事情で残らざるを得なくなった、①古代史の教師ハナム(生真面目で融通が利かず、生徒からも教師仲間からも嫌われている(2))、②生徒アンガス(勉強はできるが反抗的で家族に問題を抱えている)、③料理長メアリー(ベトナム戦争で一人息子のカーティスを失ったばかり)が、2週間の共同生活の間に、少しずつ心を許し、お互いを認め合うようになる様子が描かれています。

正直ラストは明るいものではありません。しかしアンガスの成長ぶりが明るい未来を示唆しているようにも感じました。何より教育(と研究)について考える機会を与えてくれる貴重な作品でした。

(1)この作品の原題は、”The Holdovers -They're all alone in this together.-“(「残っている者-彼ら/彼女らは皆同じ場所にいるけれども、それぞれが孤独を感じている-」)。

(2)例えば、学生の成績評価には頑なに筋を通す。しかし(現在はハーバードでテニュアを持つ)ハーバード時代の仲間とバッタリ会うと、思わず自分の現況を取り繕うところもある。